隠された墓

Happy Thanksgiving! カナダの感謝祭はアメリカより1ヶ月以上早い、10月第2月曜日。この週末はボスの奥さんの焼いたターキーを堪能。今年は家族全員が集まれないので丸焼きでなくこじんまりだけど、美味しかった!


私はと言えば、先週あたり落ち着くと思っていた仕事が落ち着かず、年内はこのままずっとバタバタな感じで進みそう。

お店は感謝祭やハロウィンモード、(中にはクリスマスグッズも!)今年は遅れたけれどようやく紅葉もピークを迎えて来て、私がデスクに向かっているこの瞬間にも、季節はどんどん変わって行く。


カボチャの入った箱にまで可愛い絵が!

秋の野草やキノコ狩り、森のウォーキングなんかを楽しみにしていたけど、今年は見送らざるを得ないかな、、、。

でも、こうやって木々の色が変わり、空気が変わると、以前よく歩いた森の風景が脳裏に蘇ってくる。まだトロントではニューヨークにいた時ほど歩いていないから、思い出すのはもっぱらニューヨーク周辺の森。


中でもよく思い出すのは、私が大好きだった公園、ニューヨーク・ロングアイランドのカムセット・パーク。(Caumsett State Historic Park Preserve


ルーズベルト元大統領の家があるオイスター・ベイや、ビリー・ジョエルが以前住んでいたコールド・スプリング・ハーバーを過ぎた、ロイド・ハーバーというエリアにある。

Caumsett とは、この地に居たネイティブ・アメリカンの言葉で「鋭い岩による場所」。昔の高官だか元帥の私有地を60年代にニューヨーク州が買い取った土地だそうだ。

湾を臨む高台の邸宅や古い納屋だのは、一部18世紀(!)のもので、修復されつついい雰囲気で残っている。




ちょっとした馬舎と乗馬・ポロ競技スペースや庭は、この私有地が英式でデザインされたことを物語っている。10月の今ならカボチャのディスプレイがあること間違いなし!


以前のカボチャデコレーション写真見つけた!

そしてこの公園の秋の風景が頭に浮かんだ時、合わせて思い出すのが、ここで遭遇した不思議な体験。

この公園はところどころにトレイル(遊歩道)があるのだけれど、私や一緒に行っていた友人は、野草やキノコを求めてしばしトレイルから外れて林の中に入って歩くのだった。

しょっちゅうキノコ探しに行っていると、キノコの生える種の木の有無、木の古さ、落ち葉の湿り具合や陽の当たり方などを見て、大体「ここにありそう」という環境がわかるようになる。

だから、林に入るのは、「む、ここはアヤシイ」と目星をつけたとき。


でもある時、私は、全くそんな環境じゃない場所で、ふと気を惹かれて低い木々の間を入って行ったことがあった。

それは比較的公園の入り口に近く、まっすぐ大きな舗装道路の近くの、トレイルもサインも何もない、ただの路肩の奥。普通なら足を止めることもなく過ぎていく道だ。

自分でもなぜそこに分け入ったのかわからないけど、ほんの少し歩いて見つけたのは、、、、なんと、お墓だった。

しかも、、、お墓には公園の名前と同じ(名字?)「Caumsett」と、おそらく女性であろう名前が刻んであり、出生と死没を示す年数が。

生きた年数を計算するのは簡単だった。それは、、、たった4年だったから。

名前は一応伏せておきます、、、。

この公園がニューヨーク州に渡ったのは1961年。だから年号から言えば、その前の持ち主の時代に、おそらくこの公園に関係のある、とある34歳の女の子が亡くなったということだ。

私は名前を元に、一度ざっくりとだけインターネットで調べてみたが、これといった情報は見つからなかった。

それにしても、なぜあんな人目のつかないところに、、、?

もっとも、州立公園になる以前は、道路も出来ていなかっただろうから、当時は人目につく、ちゃんと祀られたお墓だったのかもしれない。

ただ、それならば、道路整備がなされる際に、ちゃんとその周囲だけは木々が切られお墓の場所を確保するのではないか?ましてや公園の名が刻まれるくらいの人物なら、なおさら。

実際は、そのお墓は、道路からは見えない場所の低木の影に、ひっそりとあったのだった。まるで、「あえて」隠されたように。


私はお墓の名前と彼女が生きたとても短い年数を見て、何かただならぬ事情を感じ、そして悲しくなった。誰からも気づかれない場所にひとりぼっちで眠っているような気がして、、、。

たまたま私が「呼ばれた」のか?気づいてあげられたし、おそらく公園管理の作業者なんかは知っているだろう。でも、果たして誰か、個人的に・継続的に、彼女を訪れている人はいるのだろうか?

私は腰を下ろして手を合わせ、しばらく彼女のために祈った。そして次に来るときはお花を持ってきてあげようと思った。

実際はそれが私にとって最後のニューヨークの秋となり、まだ再訪は果たしていないが、、、。

けれど、あの時分け入った低木に似た木を見ると、そしてあの日のような秋の澄んだ空気を感じると、ふと、あの隠された墓のことを思い出すのだ。


これまた奇遇だけど、今ブログに使う当時の写真を出してきてびっくり、お墓を見つけたのは、今から7年前のちょうど今日、109日だった。

今宵はトロントからロングアイランドに向けて、彼女に祈りを捧げることにしよう。 




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