ゲイリーおじさんのワゴン

ここ2週間ほど激務でバタバタと時間が過ぎていっている。栽培中の野菜もほったらかしだし犬のロウニンとも遊べていない。会食も多いが、立派なモノ食べている割に、やはり仕事上での食事だから食べた気しないし。

今、明日の予定が急に変更になって1時間ばかしポンと空いたから、気分転換兼ねて、これを書いている。

「頭のリフレッシュのために好きなことを書こう!」と思って浮かんだのが、今身体が求めている新鮮な野菜、そしてゲイリーおじさんのこと。

ゲイリーおじさんは、北の職場の近所に住んでいる60-70代くらいの男性。かわいいワゴンで自分の作った野菜を売っていて、それを買いに行って知り合ったおじさんだ。


  
彼は以前、もっとトロント寄りの広大な土地で小麦だかコーンだかを栽培していたそうだ。数年前に引退して、今の北の地に移ってきた。

大規模農業は引退したものの、今の家の庭で、奥さんと一緒にこじんまりと野菜作りをしている。出来た野菜は、自分たちの食べる分を差し引いても余るから、その余剰分を道行く人に売っているわけだ。

売っている、といっても、野菜を無駄にしたくない、というのが一番の目的だから、どれも25セント~3ドル(25円~300円)くらいの良心的値段。

多種類を少しずつ。賑やかで楽しい。

しかもその売り上げは、おじさんの娘がサポートしている子ども向けフードプログラムのNPOに寄付しているから、儲け目的でなく、老後のひとつのアクティビティーというだけだ。

それでも、彼らはそもそもがプロフェッショナル・ファーマーだから、美味しい野菜を作るし、しかもHeirloom(在来種、固定種)やNon-GMO(非遺伝子組換え)にこだわっているので、買う側には嬉しい。

手作りサインもまた味がある

立派なビーツ、1ドル。これ一個で葉も含めて4品もできた。

いろんな種類のミニポテト。毎年新しい品種を取り入れて楽しんでいるんだとか。

基本、現金ボックスが置いてあって、買う人は勝手に野菜を選んで、勝手に支払っていく、無人販売スタイル。

とはいえ、ゲイリーおじさんはだいたい庭で作業しているから、誰かがワゴンに来ると出てきて売れた野菜を袋に詰めながら立ち話。

私もおじさんに会えれば、野菜栽培についてヒントをもらったりする。今年の話題はやはり長雨だった。野菜の出来具合や時期が狂っちゃったから。

それにしても、なんかいいなあ、こういうの。野菜を育てる喜びや収穫物、その土地の気候なんかを共有している感覚。そして直販の基本、「ワゴン売り」というスタイル。

ちょっと田舎にいけば、ここでも日本でも見られるが、この販売方法だと、野菜を作った人の愛情がダイレクトに伝わるようでほっとする。

ワゴンと言えば、以前、アメリカのペンシルバニア州に行った時のことを思い出す。そこはほとんどが農地なのだが、ところどころでワゴンや小屋、トラックで野菜やパイやクッキーなどのベーキングものが売られていた。

だだっ広い農地の脇に、ポツンと販売小屋があったりする。

ペンシルバニア州はドイツ系移民が多いせいか、出来立てのプレッツエルを売るベンダーもあった。これは買わずにいられない!



ケトル(釜揚げ)メイドのフレッシュなポップコーンも!


そしてアーミッシュ(ドイツ系宗教グループ。独自の信仰や生活様式にのっとり、電気機器を一切使わない。)のベンダーなら、彼らの衣装や振る舞いを見るのも異文化に触れるようで楽しかった。

自動車は使わず馬車を使うアーミッシュエリアにある標識

こちらでは夏の後半、道路脇でコーンの叩き売りをやっているのをよく見るが、日本では?やっぱスイカ?小さな小さなワゴンの直販も含めるなら、そうだ、秋田の「ババヘラアイス」も思い出した!

私は実家に帰ると、農家のお母さんたちが日曜朝だけやっている路上販売に行くのが大好き。これはワゴンどころか、道路に新聞広げて野菜を置いたり、籠のまま置いたりと、ワゴンの更に上を行くスタイル!?

道路に無造作に置かれる野菜

規格外で出荷できなかった野菜とか取れすぎちゃった野菜なんだけど、質が劣るわけでないどころか、スーパーの品物より断然新鮮でしっかりしてる。それがとっても安く売っているのだから、本当に嬉しい。

そして、これも同じく、直接野菜を作った方と触れ合うのがまたいいのだ。「今年のは少し苦いからね」「長めに茹でて」とか、ちょっとした料理のヒントをもらえたりして。

ワゴン売りだけでなく、ローカルの市場もそうだけど、「地元の野菜を買う」というひとつの行為が、人の繋がりや生活、経済などのいろんな循環の一部であることわかる。というか、昔流通がなかった時代は、その地域で生活が完結するのが自然だったのだろうから、当たり前か。

今は北の職場へ行ったり来たりだから出来ないけど、私もいつか自分の育てた野菜でワゴン売りしようかな?ワゴンのデザインやデコレーションを考えるのも楽しそう。

ゲイリーおじさんは野菜の品種情報なんかをちゃんとワゴンの壁に掲示していて、とってもEducational & Informativeでもある。


自分なら、、、横にミニキッチンつけて、試食も可にするとか?(てか、自分が一番食べていそう!その場がそのままお茶会、飲み会会場になるとか!)こういうの夢想しているとワクワクするなあ。

大きな木の下でまったりと人を待つワゴン。

と、ちょうど夢見心地でいい気分になったところでハイ、時間。現実に戻ってまた仕事します。あと1週間ほど激務は続く、、、。


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